いちばん近くて遠い人
34.Would you……
「Ellie!Would you marry me?」

「Hey!Joe!Wait!!」

 加賀さん……だ。

 空港に行けば会えるからという隼人さんの言葉を信じて私は異国の地に降り立った。

 半信半疑だったのに目の前に加賀さんがいる。

 けれど、ものすごいスピードで話している2人の会話についていけない。
 さっきのもエリーくらいしか聞き取れなかった。

 加賀さんと話している男性は頬から顎にかけて髭をたくわえた紳士。

 現地の人なのだろう。
 日本人にはない彫りの深い顔立ちと、決して太ってはいないけれど大柄な体つき。

 その人と話していても霞むどころか負けていない加賀さんはニューヨークでも道行く女性が何人も振り返る。

 しばらく言い争っていた2人は男性が加賀さんから逃げるような形で私の方へ顔を向けた。

「エリーさん。あなたは わたしの たいせつな おんな です。」

「だから!ジョー!お前!!ふざけんな。」

 怒る加賀さんにジョーさんは素知らぬ顔だ。

「ふざけてない でぇす。」

「ふふっ。面白い。
 日本語、お上手なんですね。」

 加賀さんがタジタジなんて。

「マサヤ から ならいました。
 マサヤ おんな きょうみ ない。」

「嘘。加賀さんが?」

 思わぬ発言に目を丸くした。

「おんな くる いや。
 だから ぼく えいご おしえる マサヤ にほんご おしえる。」

 本当に?

 真相を確かめようと加賀さんを見るとふてくされたようにそっぽを向いた。

「マサヤ エリー たいせつ だから エリー ぼく も たいせつ。」

「ジョー!もういいだろ。
 英里!行くぞ。」

 英里って……。

 しまったという顔をして、加賀さんは私の手を引いて歩き出した。







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