いちばん近くて遠い人
「あ、ボスも戻って来たわ。」

 いつもながらにネクタイを緩めながら戻る加賀さんは頭をかいた。

「悪い。俺から提案しておいて、まだ一件あるんだ。
 終わってから合流する。
 南、武蔵にもそこで会えるぞ。」

 急に話を振られてなんのことやら理解が追いつかない。

「武蔵……ですか。熊みたいな?」

 歴史上の人に会える場所?
 佐々木小次郎とかにも会えるわけ?

 頭に疑問符をたくさん浮かべていると「宮本武蔵を想像してるのか?熊というか剣豪だろ?」と指摘された。

「いや。
 でも、武蔵さんは熊みたいですよ。」

「確かに熊ね。
 猛獣のっていうより森のクマさんだけど。」

 ますます混乱して「何がなんのことですか?」と質問すると3人で顔を見合わせて吹き出した。

「悪い。悪い。説明不足だった。
 あと1人いる会ってないメンバーが植田武蔵。
 剣豪の武蔵っていうより、森のクマさんって風貌ってこと。」

「ま、会ってからのお楽しみね。」

 美智さんは楽しそうに笑う。


 



 
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