いちばん近くて遠い人
 同じフロアは営業の部署で、どこもかしこも人がいない。
 まぼらというよりもほとんどいない。

 その中で横から人に見られているような見られていないような空間で仕事するのには慣れない。

 当の本人は気にしていないけれど。

「あー!また違う。」

 落胆の声を上げた加賀さんはパソコンのディスプレイの端に何かを並べた。

「どうかされましたか?」

 心底残念そうな顔をしている加賀さんが両手に同じ物を手にして嘆いた。

「このペットボトルのお茶についてる指人形を集めてるんだ。
 あと1つでコンプリートなのに毎回、同じ奴が出る。」

 こいつ3体目だぜ?
 と、指に入れてふざけて遊ぶ加賀さんに質問する。

「好きなキャラクターなんですか?」

「いや。
 ただ集め始めたらコンプリートしたいもんだろ。
 それが男のロマンってやつ。」

 意味が分からないことをほざく……いえいえ、おっしゃる加賀さんに呟いた。

「そういえば今日買ったお茶、同じのですね。」

「なんだよ。そういうことは早く言えよ。」

 期待に満ちた視線を浴びて言わなきゃ良かったと後悔した。

 蓋にかかっている小さな袋を取り外して加賀さんの机に置いた。

「なんだ。開けていいのか?」

「どうぞ。お好きに。」

 しばしの静けさ。

「………マジか!すげーな。
 南、持ってんな。」

 はしゃぐ加賀さんの方を見れば少年みたいな顔で笑う加賀さんと目が合った。

「ほら。欲しかった、しかもレアバージョン。」

「それは良かったですね。」

「冷めてんなー。
 ま、その欲の無さが引き当てたんだよな。
 うん。きっとそうだ。」

 嬉しそうに並べて、あーでもない、こーでもないと言う加賀さんを冷ややかな目で見ていた。

 どうせ集めたら飽きて捨てるくせに。

 そうやって………ううん。私には関係ないことだ。

 少年のような純粋な笑顔に騙されないように気を引き締めてパソコンの画面に集中した。









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