いちばん近くて遠い人
「隼人さんと武蔵さんは今までどなたがアシスタントされていたんですか?
 美智さんお一人で?」

 午後から営業だと連れ出された車内で質問した。

 前のお客様、岩城様の口ぶりでは美智さんは独り立ちしたみたいだった。
 それぞれみんながみんな忙しそうで、アシスタントはどうしているのだろうとふと思ったのだ。

 あぁ。そんなことという顔をした加賀さんが当たり前のことのように話した。

「アシスタントが、というか2人で営業するのは重要案件だけだ。」

「………はい?
 初めて知りました。」

 最初の言い方じゃ俺の営業は全部ついて来いよって……勝手にそう思い込んでいただけかもしれない。

 記憶を辿っていると、頭を軽く小突かれて「俺が南と外出しない時は遊んでるとでも思ってたか」と文句を言われた。

「いえ。そんなことは。
 美智さんがアシストか、それともアシスタントは他部署にお願いしてるのかと……。」

 ウェーっと変な奇声を発した加賀さんは心底嫌そうな顔をした。

「信頼してない奴と物が売れるかよ。」

 信頼…して……るってこと?
 私のこと。

 加賀さんの方を伺うと目が合って、あからさまに逸らされた。

「行くぞ。
 ここから歩いて現場だ。」

 誤魔化すように車を降りる加賀さんに続いて外に出た。

 このまま有耶無耶にされそうで、だからわざと加賀さんの言葉を引用して聞いた。

「私をメンバーに加えたのは美人だからって理由じゃなかったでしたっけ?
 俺にひけを取らないとか、なんとか。」

 顔を背けて頭をかく加賀さんが新鮮だ。
 少しはいつもの仕返しが出来ただろうか。

「そりゃ武蔵も隼人とミッチーだって俺と働いてくれてる奴は信頼してる。
 だからそれは………もちろん南もだ。」

 伸ばした腕に引き寄せられてドキリとすると頭をクシャクシャにされた。
 突然のことに呆然とする。








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