サーペンディス 天秤に架けられた少女
プロローグ



 空みたいな色をした泉にあの子を沈める。あの子はゆっくりと泡と共に沈んでいく。

「本当に良かったのですか?」

「―――えぇ。良いんです。これで。良かったんです」

 あの子が見えなくなるまでずっと泉を見る。
 私はこの子を預けるためにあの人に手紙を出した。あの人も分かってくれるだろう。

 見えなくなった。あの子は魔法界へ無事に行った。
 私は立ち上がり、悲しそうな顔をしている王妃さまを見た。

「時々手紙を出します。大魔女になったら会いに行くと」

「私には『ここ』に来て我が子をサーペンディスにするなんて考えられません」
「あなたがそんな事を言うなんて・・・」
「王も言っています。しかし絶えずに人々はやってくるのです。止められません」
「また、来ます」

「サーペンディスにいつの日か巡り逢えますように・・・・」

「ありがとう」
 私は2度と振り返らず、魔法界に向かった。


 600年前の中世へ―――



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