秘密の約束。
「なんだよ」


触れようとした手を引っ込めた。
いつもより冷たい言い方でびくついたからだ。

睦月の声は泣いたらしく、鼻声だった。

「おじちゃんがね…。変なの。一人で譫言をぶつぶつ言ったり…まるで誰かと話してるみたいなの…」


あたしは震える声で睦月に話しかけた。


助けてって意味だったのに。


「ショックで一時的にそうなってるんだよ。ほっといても大丈夫だ」


まるで他人事のように話す睦月。


なにその態度。


睦月だけが悲しい思いをしているんじゃないんだよ?


あたしだって悲しいに決まってる。


なのに…。


自分以外はほっておくんだ?


おじちゃんもお父さんなのにね?


「…もういい」


あたしは睦月に背を向け部屋を出た。


睦月に慰めてもらおうとしたのがバカだった。
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