秘密の約束。
「いちかは強いね…。僕は弱虫だ…。」

お母さんを守れなかった。弱虫だから、僕があのときすぐ警察に電話をしていれば…。

「むつきは強いよ。」

いちかは真顔で言った。なぜそう思ったのか分からない。

もしかして僕の心を察したのかもしれない。

「むつきは強いもん。」


少し膨れぎみでもう一度答えた。でも涙は止まらなくて。うれしかったのに…

「だってぇ…」

涙は次から次へとあふれて泣き叫んだ。

お母さんが死んでから初めて泣いた。

「うぇぇー……ん」

いちかも一緒に泣き出した。なぜ泣き出したのか分からないけど2人で泣いた。

いちかは僕をぎゅっと抱きしめてくれた。
僕もぎゅっと抱きしめてあげた。

だれかに抱きしめてもらうのは久しぶりで。あったかかった…

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