終幕の鎮魂歌
ACT1〜裏切り〜
タクミ「待てリオ!
教書の模写が終わってないのはお前だけだぞ!!」
リオ「それは俺を捕まえてから言うんだな、よっと」
協会で育てられた兄弟のタクミとリオは、課題を巡って追いかけっこの真っ最中だ。
タクミ「今回課題を提出出来なかったらまたシスターに怒られるぞ?」
リオ「そんなのもう慣れっこ慣れっこ。
どうせ俺には誰も追いつけ((ボフンッ
リオは後ろにいるタクミを見ながら走っていたため、目の前のシスターに気が付かなかった。
リオはあらかじめ構えていたシスターに体当りしてしまい、そのまま弾き飛ばされた。
シスター「全く貴方は…」
シスターはスラム街で大人達に暴力を加えられていたタクミとリオを助けた義理母であり、この協会の支配人だ。
リオは尻餅をついたままシスターに笑いかけた。
リオ「げっ、…シスター」
シスター「笑って誤魔化しても無駄ですよリオ。
課題を提出しなかった場合、また協会の窓拭きを手伝ってもらいますからね」
リオ「ちぇ、まぁた今回も先回りされてたし、やっぱりシスターの方が1枚上か…。
わかったわかった、模写やるから窓拭きは勘弁してくれよ」
シスター「分かったならよろしい、早く部屋に戻りなさい」
シスターの言葉に渋々と部屋に戻っていくリオだったが、タクミの目の前で足を止めた。
リオ「そうだコレ、タクミに渡そうと思ってたんだ。
俺の小遣いを貯めて買ったんだ、大事にしてくれよな」
リオはタクミに向かってポイッと小さな四角い箱を投げた。
リオ「じゃあなタクミ、課題終わったらまた遊ぼうぜ!」
リオはタクミにヒラヒラと手を振り、協会の中へと戻って行った。
シスター「タクミももうすぐ日が暮れますよ。
今夜は寒いですから、早く戻りなさい」
シスターの言葉に、タクミも早々に協会へ戻った。
✩
協会の自室に戻った匠は、リオから貰った四角い箱をそっと開けてみた。
すると箱の中には、綺麗に型取られたルビーのネックレスが入っていた。
リオなりの好意なのだろう。
タクミ「全くアイツは…」
そう言いながらもタクミの頬は心做しか赤かった。
タクミ「そうだ…」
アイツにもこれを見せてあげよう、そう思い協会を出、辺りを見回すと、
「ニャー」という鳴き声とともに子猫がタクミの足に擦り寄って来た。
タクミ「これ、アイツから貰ったんだ。
素敵だろう?」
子猫を抱きしめながらタクミは幸せそうに微笑んだ。
子猫も嬉しさを分かち合ってくれているのか、タクミの頬にスリスリと顔を擦り付けた。
タクミ「そうか、お前も分かってくれるのか」
タクミは子猫をそっと降ろすと、子猫に手を振り書庫へ向かった。
表から出入りするとシスターに叱られるため、裏口がある書庫を通らなければならない。
タクミ「誰かに見つかる前に早く帰ろう…」
タクミは早足でスタスタと自室へ向かう。
その時、微かな紫色の光が本棚の裏側から漏れているのに気がついた。
何やらヒソヒソと話し声まで聞こえてくる。
こんな深夜まで書庫に人がいるとは思えない。
タクミは不審に思って本棚の裏を覗いて見た。
リオ「愛するお友達とやらに別れは済ませたのかい?」
リオ「いや、いいんだ。
別れを告げたらアイツは絶対俺を引き止める」
レン「そうか」
タクミは恐ろしい生き物を見てしまった。
頭から少し出っ張って出ている小さな角。
真っ赤に艷めく蝙蝠のような翼。
真っ赤な唇から剥き出した2つの牙。
あれはどう見ても悪魔だ。
タクミは思わず叫んでしまった。
タクミ「リオッ!?」
タクミが切羽詰まった表情をしているにも関わらず、リオは涼しい表情で微笑みかけた。
リオ「タクミ、夜更かしはいけないぞ?」
タクミ「そんな事どうだっていい!!
何で、何でリオが、悪魔と契約してるっ!?」
どうする自分、考えろ考えろ…。
タクミは数票で脳味噌をフル回転させ、何か閃いた顔をするとすぐに目を瞑った。
手を目の前でかざし、思い切り悪魔を睨みつける。
すると悪魔の飛んでいる足元の周りに金色の魔法陣が現れ、悪魔の動きを封じた。
レン「ぐっ……、やるじゃんガキのくせに」
悪魔が一瞬怯んだように見えたが、それは一瞬のことだった。
レン「でもざーんねん♡
魔力は俺の方が上だよっ!」
悪魔はタクミの魔法を一瞬で取り払うと、タクミを炎と爆風で吹き飛ばした。
タクミ「ア゙ッ!?」
タクミは爆風によって本棚に強く頭を打ち付け、気絶してしまった。
リオが張り付いた笑顔で近づいた。
リオ「おやすみ、タクミ」
そう言いながらリオがタクミに触れようとした瞬間、結界が張られリオの手はバチンと跳ね返された。
リオ「何だ…?」
次の瞬間、黄色い光が辺りを照らし、少女の姿をした天使が現れた。
天使の羽がタクミを包むように抱擁するが、天使自体が目を覚ますことは無かった。
リオ「守り手がいたか…」
レン「始末しなくていいのか?」
リオ「あれが目を覚ますと面倒だ。
俺達とは敵対する生き物だからな」
レン「それもそうだな」
リオとレンは黒い霧を纏うと、音もなく消えた。
それから3年、リオは煙のように行方を眩ませた。
タクミ「待てリオ!
教書の模写が終わってないのはお前だけだぞ!!」
リオ「それは俺を捕まえてから言うんだな、よっと」
協会で育てられた兄弟のタクミとリオは、課題を巡って追いかけっこの真っ最中だ。
タクミ「今回課題を提出出来なかったらまたシスターに怒られるぞ?」
リオ「そんなのもう慣れっこ慣れっこ。
どうせ俺には誰も追いつけ((ボフンッ
リオは後ろにいるタクミを見ながら走っていたため、目の前のシスターに気が付かなかった。
リオはあらかじめ構えていたシスターに体当りしてしまい、そのまま弾き飛ばされた。
シスター「全く貴方は…」
シスターはスラム街で大人達に暴力を加えられていたタクミとリオを助けた義理母であり、この協会の支配人だ。
リオは尻餅をついたままシスターに笑いかけた。
リオ「げっ、…シスター」
シスター「笑って誤魔化しても無駄ですよリオ。
課題を提出しなかった場合、また協会の窓拭きを手伝ってもらいますからね」
リオ「ちぇ、まぁた今回も先回りされてたし、やっぱりシスターの方が1枚上か…。
わかったわかった、模写やるから窓拭きは勘弁してくれよ」
シスター「分かったならよろしい、早く部屋に戻りなさい」
シスターの言葉に渋々と部屋に戻っていくリオだったが、タクミの目の前で足を止めた。
リオ「そうだコレ、タクミに渡そうと思ってたんだ。
俺の小遣いを貯めて買ったんだ、大事にしてくれよな」
リオはタクミに向かってポイッと小さな四角い箱を投げた。
リオ「じゃあなタクミ、課題終わったらまた遊ぼうぜ!」
リオはタクミにヒラヒラと手を振り、協会の中へと戻って行った。
シスター「タクミももうすぐ日が暮れますよ。
今夜は寒いですから、早く戻りなさい」
シスターの言葉に、タクミも早々に協会へ戻った。
✩
協会の自室に戻った匠は、リオから貰った四角い箱をそっと開けてみた。
すると箱の中には、綺麗に型取られたルビーのネックレスが入っていた。
リオなりの好意なのだろう。
タクミ「全くアイツは…」
そう言いながらもタクミの頬は心做しか赤かった。
タクミ「そうだ…」
アイツにもこれを見せてあげよう、そう思い協会を出、辺りを見回すと、
「ニャー」という鳴き声とともに子猫がタクミの足に擦り寄って来た。
タクミ「これ、アイツから貰ったんだ。
素敵だろう?」
子猫を抱きしめながらタクミは幸せそうに微笑んだ。
子猫も嬉しさを分かち合ってくれているのか、タクミの頬にスリスリと顔を擦り付けた。
タクミ「そうか、お前も分かってくれるのか」
タクミは子猫をそっと降ろすと、子猫に手を振り書庫へ向かった。
表から出入りするとシスターに叱られるため、裏口がある書庫を通らなければならない。
タクミ「誰かに見つかる前に早く帰ろう…」
タクミは早足でスタスタと自室へ向かう。
その時、微かな紫色の光が本棚の裏側から漏れているのに気がついた。
何やらヒソヒソと話し声まで聞こえてくる。
こんな深夜まで書庫に人がいるとは思えない。
タクミは不審に思って本棚の裏を覗いて見た。
リオ「愛するお友達とやらに別れは済ませたのかい?」
リオ「いや、いいんだ。
別れを告げたらアイツは絶対俺を引き止める」
レン「そうか」
タクミは恐ろしい生き物を見てしまった。
頭から少し出っ張って出ている小さな角。
真っ赤に艷めく蝙蝠のような翼。
真っ赤な唇から剥き出した2つの牙。
あれはどう見ても悪魔だ。
タクミは思わず叫んでしまった。
タクミ「リオッ!?」
タクミが切羽詰まった表情をしているにも関わらず、リオは涼しい表情で微笑みかけた。
リオ「タクミ、夜更かしはいけないぞ?」
タクミ「そんな事どうだっていい!!
何で、何でリオが、悪魔と契約してるっ!?」
どうする自分、考えろ考えろ…。
タクミは数票で脳味噌をフル回転させ、何か閃いた顔をするとすぐに目を瞑った。
手を目の前でかざし、思い切り悪魔を睨みつける。
すると悪魔の飛んでいる足元の周りに金色の魔法陣が現れ、悪魔の動きを封じた。
レン「ぐっ……、やるじゃんガキのくせに」
悪魔が一瞬怯んだように見えたが、それは一瞬のことだった。
レン「でもざーんねん♡
魔力は俺の方が上だよっ!」
悪魔はタクミの魔法を一瞬で取り払うと、タクミを炎と爆風で吹き飛ばした。
タクミ「ア゙ッ!?」
タクミは爆風によって本棚に強く頭を打ち付け、気絶してしまった。
リオが張り付いた笑顔で近づいた。
リオ「おやすみ、タクミ」
そう言いながらリオがタクミに触れようとした瞬間、結界が張られリオの手はバチンと跳ね返された。
リオ「何だ…?」
次の瞬間、黄色い光が辺りを照らし、少女の姿をした天使が現れた。
天使の羽がタクミを包むように抱擁するが、天使自体が目を覚ますことは無かった。
リオ「守り手がいたか…」
レン「始末しなくていいのか?」
リオ「あれが目を覚ますと面倒だ。
俺達とは敵対する生き物だからな」
レン「それもそうだな」
リオとレンは黒い霧を纏うと、音もなく消えた。
それから3年、リオは煙のように行方を眩ませた。