王子様と野獣
目の前の彼は背も高く、しっかり背中を伸ばさないと顔の確認ができなかった。
記憶にあるよりは、茶色っぽくなった金髪。茶色の瞳は彼がアジア圏の血を引いていることを伝えるけれど、はっきりした目鼻立ちは生粋の日本人とはあまりにもかけ離れている。
いや、ホントに、俳優さんといわれても頷いてしまうほどの美形。
まさしく王子様。大きくなっても王子様。
こんな再会ってある? まさに運命じゃない?
十六年間止まっていた運命の針が、今まさに動き出したって感じじゃないですか?
「主任、お知合いですか?」
そこに、すっと私の興奮を冷やすような声がした。
ここまで案内してくれた田中さんだ。さっきまで私の隣にいたのに、今は彼の隣に立って、若干軽蔑するような瞳で私を眺めている。
「ああ。昔、親同士が知り合いで。……ごめん、仕事中だね。改めまして、馬場です。君には、一年間の契約でこの土地開発部門の事務を担当してもらうことになります。今は前任者もいるから。引継ぎ期間は一ヵ月……と言っても、彼女も有休消化があるから実質は二週間ってところかな。ちょっと大変かもしれないけど、よろしくお願いします」
「あ、はい。こちらこそ」
「能力に応じて雇用契約の継続もあるので、できれば長く勤めてほしい」
「はい!」
「じゃあ紹介しようか。田中さん、皆を集めてくれる?」