アッファシナンテ

部屋を出た先には壁にもたれかかった
崎本さんがいた。

遼「もしも、俺が
藤堂財閥の名を継いだらって
考えると吐き気がする。
あんたで良かったなって
本気でそう思う。
だから、その重荷に押し潰されそうに
なってる事くらい俺だって花恋だって
知ってるから、花恋もあんたを
責めたかった訳じゃないと思う。
でも、めちゃくちゃ頑張ったんだ。
あんたに喜んでもらうために花恋は
今日まで色んな事を頑張った。
だからさ、ショックだったんだよ。」

光「分かってますよ。
そんな事くらい。」

遼「ふっ。そうだよな。
ワガママで融通の利かない
あのお嬢様のそばに
ずっと居られるのは
あんたしかいないよ。」

光「ええ、そうですね。」

花恋の部屋へと入っていく
崎本さんを見送ると
キッチンへと向かった。

思い出さなければならなかったから。

俺と花恋が付き合う前の
ただの執事とお嬢様という
関係だったあの頃を
思い出さなければならなかった。

私も花恋も
あの頃の気持ちを失って
しまったのだから。
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