花瓶─狂気の恋─

────────────────────


「あぁ〜、やっちゃった〜。」


スマホ画面に映る泰河の亡骸、雫は片手に持っていた手帳でスマホを隠しながらそう呟いた。


「何のことですか?」


晶子も椅子に拘束され、目の前で折りたたみ式の椅子に座っている雫に問う。


「....気にしなくていいわ。さぁ、あんまり時間が無いようだから話しましょうか。貴女、今から口封じに殺されるわけだけども...助かる道があるの。何でも二つだけ願いを叶えてあげるって真帆が言ってるの。何を願う?」


「....悠雅先輩と泰河君は無事なの?無事だったらその二人を助けて。私は...どうだっていい。」


晶子の問いに雫はスマホの電源を切り、代わりボールペンを手に持って手帳にメモを取っていく。


「へ〜。自分は助かりたくないの。そんなにしてまでいい子を続けたいの?本心から言ってみなさい、誰も貴女を咎めない。自分と泰河君は逃げて、悠雅と真帆が二人になる。これがベストの解答だと思うけど?」


雫はそんな甘い言葉をかけるが、晶子は睨んでその誘惑を消し飛ばした。


「答えは変えない。私が残る。悠雅先輩も泰河君も私の巻き添え、私が真帆を受け止める。それが真帆の状態に気付けなかった私の罪滅ぼし。」


誘惑に負けるとばかり思っていた雫は何度か頷き、少し満足そうな表情をしていた。
< 212 / 259 >

この作品をシェア

pagetop