花瓶─狂気の恋─

真帆は勢いに任せて屋上まで走っていた。そこに悠雅がいるという事がわかっている訳でもない。また別の理由だった。

真帆は笑いを堪えていた。視聴覚室から笑いが込み上げてきて真帆は笑いそうになっていたのだった。


あんな重々しい雰囲気、笑っちゃう。第二の葬式かな?あいつは死んでるのに、それも私が殺した。ふふふっ、やっば!思い出しちゃう...あいつの死に様!


「ププっ....ブフッ!」


真帆は口を両手で抑えながら、屋上へ向かった。屋上に行くのは思いっ切り笑うため、今にでも爆発しそうな勢いだったからだ。

屋上の錆びたドアを開け、そのまま大声で笑おうとすると、一人こちらに背中を向けて座っているのが見えた。

真帆は口から出てきそうな笑いをギリギリ抑えた。その座っている人物が悠雅だと分かったからだった。

真帆はスイッチが入ったかのように、恋する乙女に変身した。
笑いなどすぐに消え失せ、悠雅の姿を見た時の胸が踊るような感覚が圧倒的に強かった。


真帆は心臓が飛び跳ねそうになりながら、悠雅のそばまで近寄った。


「...隣いいですか?」


そう一声かけると、悠雅はゆっくりと真帆の方を向いた。
悠雅は目を真っ赤にして、弱々しい顔をしていた。まるで弱っている子犬のよう。
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