運転手はボクだ
「…もう、悩んでる猶予も余りありませんね。直ぐの事ですよね」

「あ、ああ、そうなるね」

…。

「あ、千歳君は?」

「うん、今から迎えに行くんだ。その前にと思って」

そうなんだ…。迎えに行った時には、どうなったか伝えるつもりで、先にうちに…。

「あの…ちょっとだけ、時間をもらえますか?あ、変なこと言ってますけど、返事は多分…大丈夫です、と言います。でも、ちょっとだけ、時間をください。…変ですけど」

「じゃあ…行ってくれるの?」

「はい、行きます。でも時間を」

変な言い方をしてるって自分でも思っていた。

「うん…解った。あ、どうしようか。連絡先、教えておこうか」

「あ、はい。そうですね。ちょっと、待っててください、携帯、取ってきます。急ぎますね」

パタパタと置きっぱなしのバッグの元へ走った。

携帯を手に戻った。

「いい?番号言うから、そっちからコールして?」

「はい、お願いします」

「090…〇〇〇〇……XXXX、大丈夫?」

「は、い。…はい」

RRR。

「OK。じゃあ、構わないタイミングで、連絡を待ってるから」

「はい。変な言い方してごめんなさい、必ず連絡します」

「いや、なんとなくだけど、その気持ち解るから。じゃあ、行くよ」

「はい。ごめんなさいおやすみなさい」

「ん、おやすみ。無理言ってごめん、有り難う」

あ。カチャ。

…。ドアが閉まると力が…抜けた。
嵐が通り抜けて行った…。

はぁぁぁ、腰が…抜けるかと思った。それだけ、何だか知らないが突然の事にビックリした。…緊張した…。いきなり訪ねてくるなんて。
何が起きたのか解らなかった。突然、訪問されるなんて、思いもしなかった…。
一緒に星を見に行く事は、別に躊躇するようなことではなかった。全然大丈夫。
急なことだって、大丈夫、行ける。
それでも、大丈夫なのに、ちょっとだけ返事を待って欲しいと言ったのは、勿体ぶってとか気を引こうとか、そんなんじゃない。さめじまさん親子に関わる事になってしまう、と思ったから。多分、それをさめじまさんも察していた。
それが、どんな事になるのか、この先…知り合いのおばちゃんで居続けることが出来るのか、不安になって来たから。
何故なら、の部分…、が、まだ…解らないから。

ブー、ブー。わっ。
あ、これは、さめじまさんの番号。

【ついでにアドレスも教えておくよ】

電話帳、入れておこう。さめじましげる、って、どんな漢字なんだろう。
ひらがなだと、なんだか可愛い…。
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