運転手はボクだ
・星を見に
ふぅ。何だか…今日も疲れちゃった。何か癒しになるものが欲しいかも。
メダカでも飼ってみようかな。あれは、ブクブクとかいるのかな。水草があれば大丈夫だっけ?
でも、水の交換とか、たまにしないと駄目?もし、ブクブクが必要なら、急な停電になったらどうなるの?
酸欠で…死んじゃう?
やっぱり、生き物は思いつきでは飼えない。飼われる方が可哀そう、いい迷惑だ。
動物園とか、植物園とか、水族館とか?ゆったり時間が流れているような空間に行けばいいのか。…でも。
人が沢山居たら意味がないのか。場所はよくてもタイミングか…。
あ、サボテンは?
でも、それも、あんまりネガティブな話し掛けばかりしてたら、枯れたって話を聞いたことがあったな。言葉でストレスを受けたってことだ。
それも、どうかと思うよね。…はぁ。

ピンポン。

「は~い」

誰だろう…。カチャ。

「はい?あ」

……え。…え?

「今晩は」

えー!…あ。

「あ、今晩は。…あの、一体…、どうかされましたか?」

「ん、ん。ちょっと、頼みがあって来たんだ。あ、ごめんね、いきなり来たりして」

「え?あ、いえ。は、い…?頼み?私に?」

「うん。七夕、休みなんだけど…」

七夕?

「は、い」

「あぁ、えみちゃんは?休み?」

…えみちゃん、て。あ。

「はい、休みです」

「翌日も休み?」

「はい、日曜ですから…」

随分、念入りに聞かれてる気が…。

「あの~」

それが何か…。

「ふぅ。…あのね、一緒に長野に行ってくれない?」

「え?えっと、長野?」

長野?!…一緒に?…??

「そう、長野。あ、説明が足りなさ過ぎるか…急な話だしな…」

あっ!

「もしかして、星、ですか?」

「そう、それ、星。そうなんだ。千歳と星を見に行くんだけど。千歳がえみちゃんと一緒に行きたいって言いだして。駄目だ、無理だって言ってるんだけど、行きたい行きたいって、毎日半ベソで。駄目だから説き伏せようとはしてるんだけど。
ごめん、俺も、無理なこと言ってるとは思ってるんだ。こんなこと図々しいよな。見ず知らずの人なのに。
知り合いになったばっかりに、千歳が…」

あ…あの天使のような顔の目から涙が零れているのを想像した。
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