運転手はボクだ
綺麗よね。私も見上げた。……あ、…はぁ、綺麗…。
広い空一杯…、満天の星だ…。はぁ、凄い…言葉は要らない。……出ない。キラキラ瞬いていた。降って来そうだ…。

「綺麗…」

息を飲む程綺麗…。

「とと、あれとあれだよ」

「ん?」

千歳君が場所を教えようと、一生懸命腕を伸ばして指をさしていた。

「あれ。あのあかいのと、すごくキラキラしろいのと、ふたついっしょのがぱぱとまま」

「そうか…そうだな…」

…あ、二人にしよう。元々二人で見るはずだったモノ。少し離れて居る事にした。

「とと」

「なんだ?」

「くるまでいかなくてもみえた」

「そうか…そうだな」

「ぼく、うちゅうひこうしになれるかな」

「えー?宇宙飛行士?」

いきなりだな、どこで覚えたんだ?

「うん。さっき、おばちゃんがみせてくれたごほんに、うちゅうひこうしってひとがいた。そらにいけるんだって」

あー、図鑑か。会いに行けると思ったんだな。

「そうだ。でも、まだ、千歳の知らない事を一杯勉強して、体も元気じゃないとなれないんだ。まだよく解らないだろ」

「うん。でもなりたいなぁ」

千歳君が大人になる頃には今よりもっと、宇宙に人が行けてる時代になってるかも。

「とにかく、好き嫌いしないでご飯を食べて、今は一杯遊ぶことだな」

「…うん」

「ん?どうした?」

「でもぼくがうちゅうひこうしになったら、とと、ひとりになっちゃう?…」

あ。星に行ったきりになってしまうと思ったのかな…。

「心配してくれてるのか?…そんな事はない。心配することじゃない。いいか?…。難しくてよく解らないだろうけど、人っていうのは、みんな、一人なんだ。だからととは寂しくない。千歳は宇宙飛行士になったっていいんだ。
どこに居たって、千歳は居る。ととも居る」

「うん」

「解らないか」

「うん」

「ハハ、…だよな。まあ、大きくなったら解るさ」

「うん」

なれるかなれないか、その望みをずっと持ち続けるかは別として、こういう場所で感じたことは一生忘れないだろうな…。

「千歳、こうしてみろ」

鮫島さんが寝転がった。
真似をして横に転がった。

「うわー…」

「雨みたいに、降って来そうだろ」

「うん!よくわからない」

「ハハ。そうだよな」

千歳君は空に手を伸ばした。…いい時間だな。

「えみちゃん!」

わっ、気を抜いていた。…びっくりした…心臓が飛び上がった。

「何?びっくりしちゃった」

「フフ。えみちゃんもねてみて?こっちにきて」

…あ。…はい。
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