運転手はボクだ
「こっち、はやく」

「う、うん」

もう、いいのかな。何だか、折角の二人の時間を邪魔するみたいで…。
遠慮気味に千歳君の横で仰向けた。

…綺麗、迫ってくるみたい。あ、流れ星。あ、あっちも。結構流れ星も多いんだ。
今更ながら、宇宙って広い…。

「えみちゃん、ぼくね」

え?あ、手を握られた。

「何?」

少し首を捻って顔の辺りを見た。

「はやくおおきくなる。おおきくなるから、ぼくのおよめさんになって?」

お…。何という…ロマンティックなプロポーズなの…。まるでこの日に合わせたようなタイミングで。
じっと見つめられていた。いい大人が…声が出なかった。

「千歳君…」「千歳」

千歳君を挟んで両側で起き上がった。

「あ」「あっ」

…大人が慌ててどうするのって、感じですかね、フフ、…はぁ。

「だめ?」

あ、駄目って聞かれても…。困ったな…、こんな時、どんな風に言ってあげたらいいんだろうか。
全くの不意打ちだった。本当におませさんだ。こんなムードのある場所で…まるでこの日を待ってたみたいに。
大人の千歳君に言われてたら凄くドキドキしてたよ?

「千歳、星…見てごらん」

鮫島さん…。助けてくれるの?

「なに?」

ゆっくり抱き起した。膝を組んで上に座らせた。

「パパとママが、そんな事を言うには、大人になってからじゃないと駄目だって言ってるぞ?」

「どうして?」

「千歳は早く大人にはなれないからだ。えみちゃんをおばあさんになるまで待たせるつもりか?」

…おばあちゃんね。フフ…複雑。

「なれないの?」

「早くはなれない」

…あ、何だか…現実過ぎて…。もっと、濁してあげてもいいような。

「ととみたいになるには?」

「ん、もっともっと、ず~っと先だ。何回も何回も夜が来て、朝になって。まだまだ千歳が数えられないくらい寝ないとなれないんだ」

…。

「仕事だってしてないだろ?」

「…うん、うんてんしゅ?」

「フ。仕事は運転手だけじゃないぞ?他にも一杯ある。…いいか?
結婚するって事は、ああ、お嫁さんになって欲しいって男が言うには、大好きな人をずっと守れるようになれないと駄目なんだ。
守るって事も、まだよく解らないだろ?」

「…うん」

「うん…。解らない事が一杯あるうちは、まだ大きくなってないって事なんだ。体もな?うんと大きくならないと好きな人を守れないだろ?強くならないと。千歳はまだととに抱っこもしてるだろ?」

「…うん」

「あの、もう…そのくらいで…」

どんどん、千歳君、元気が無くなっちゃう。
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