運転手はボクだ
「成君にとっても千歳君にとっても、一番いい結果になって。
一緒になる事になったって聞いた時は本当に嬉しかったのよ?」
手を握られた。
「…有り難うございます。私、社長も含め、凄くいい人達に巡り会えたと思ってます。幸せ以上に幸せです、ちょっと恐いくらい」
「アラアラ。ところで、あの渋い方が社長さんよね?」
三人並んで、芝の上に腰を下ろしていた。
「あ、はい。公私ともに、雇用主ですけど、家族です。フフ、不思議な人なんですよ。話せばきりがないくらい。
和装カフェを数件経営されています」
「そう。…恵未ちゃんの事が、なんて言ったらいいのか…とても気に入ってるみたいね」
「あ、んー。私、母親みたいなモノです」
「ええ?」
「…フフ。千歳君は日々成長してるのに、千歳君より子供かもです。わざとだと思いますが、子供っぽい事をしては、私に叱られて楽しんでるようです。そうかと思えば大人的にからかわれたり、色々なんです。
色んなタイプが混在してます。頭の回転が早くて…魅力的な人です」
「…あ、アラアラ。まあ、上手くいってるのね?」
「はい。多分」
「…ねえ?恵未ちゃん…。余計なお世話だけど、貴女達、子供は?好きな人の子供、欲しくない?
千歳君との事を思ったら、簡単ではない…かも知れないけど。私は千歳君なら心配ないと思うけど。
そういういい子に育ってると思うけど。
考えた事ない?…ごめんね、立ち入り過ぎたわよね。恵未ちゃんにはつい話しやすくて何でも言っちゃうから。
できない訳ではないでしょ?」
成さんの子供…。妊娠してる訳でもないのに、お腹を手で触れていた。
「…考えた事はないです」
「…そう。ごめんね。本当、言ってから謝っても遅いのに。お節介が過ぎて、ごめんね」
「いいえ。大丈夫です」
一度も、成さんとそんな話をした事はない。夢中で千歳君の世話をしてきたから。…子供。成さんは…。
「私、先に主人のとこに戻るわね。お風呂用意しておくね」
「あ、はい。すみません、有り難うございます」
…。
「千歳、覚えてるか?あの星」
「ん?うん。…ママとパパの星だって言った星だ。…子供だったから」
「別に、子供じゃなくなったって、死んだ人が星になるって思ってもいいじゃないか」
「まあ、そうだけど」
「どうするんだ?宇宙飛行士は」
「あー、それは無理っぽい」
「ならないのか?」
「…ならない。てか、なれない。無理」
「そうか。ま、あ、じゃあ、仕方ないか。夢は…別の夢はないのか?」
「…ある。…色々」
「お。なんだ?それはまた無理とか言って諦めたりしないやつか?ハハハ」
「親父と…恵未ちゃん次第…」
「ん?」