運転手はボクだ
・エピローグ

「はぁ、綺麗ですね…」

「ああ、晴れて良かったな」

「凄いな、千歳」

「うん。凄いでしょ?ここじゃなきゃこんなには見られない」

長野に来ていた。4人、家族総出でだ。
今夜は吉田さんのペンションにお世話になる事になっている。ペンションと言っても、今は経営は休まれているのだけど、部屋はそのままにしてあるから、是非来て欲しいという言葉に甘えさせてもらった。

結局、金曜の夜から出掛けるなんて、強硬手段は取らなかった。
何故なら…。
二人で居られた時間がそこそこあったからだ。何故だか何の連絡もなく、千歳君は社長と一緒に帰ってきた。きっと、社長の"はからい"だったのだろうけど。わざと、そこは知らせなかったんだ。
だから、流石に夕方辺りになると違うドキドキが増した。
成さんと、今までに過ごしたことの無い密な時間を過ごす事が出来た。だから、満たされてしまったという事だ。

「千歳君~、おばちゃん覚えてる?」

「はい、勿論です」

「まあ…大きくなったって凄いわね。勿論です、なんて言葉も使うのね」

「…。もう4歳ではないので…」

「う~ん。カッコ可愛くなっちゃって~」

ギューッと抱きしめた。

「…」

あ、そんな事、言われるのが煩わしい年頃になりましたから。あまり過剰なスキンシップも…。
千歳君は棒立ちだ。

「あの、御主人はいかがですか?」

邪魔をしようと思った訳ではない。そろそろ解放させてくれたらと思い、奥さんに声を掛けた。

「あ、大丈夫よ。有り難う。どこか悪いって訳ではないのよ。ちょっと腰とかがね。ペンションの仕事って案外重労働なところがあるから。
今は小休止。お手伝いに来てくれる人を募集してるの」

「そうだったんですね。いい人が来てくれるといいですね」

「そうね。恵未ちゃんみたいな人だといいけど」

「あ、そんな…」

「良かった。本当に良かったわ」

「え?」
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