four seasons〜僕らの日々〜
男の子にはお父さんがいない。物心がついた頃からそうだった。

友達に家族のことを話すと、みんな不思議そうな顔でそう訊ねる。

「どうして、僕にはお父さんがいないの?」

家に帰ると、男の子はお母さんに真っ先に訊ねた。

お母さんは少し困ったような顔を見せ、慎重に言葉を選びながら話した。

「お父さんはね、あなたが生まれる少し前に…他の女の人を好きになって、どこかへ行ってしまったの…」

少年の目から涙がこぼれた。『捨てられた』という文字が頭に浮かび、強い風が吹き辺りを真っ白にしていく。

男の子は、お母さんが辛い思いをしたことを知った。

男の子はお母さんにぎゅっと抱きついた。

「僕、お母さんの側にずっといる!だからお母さんも離れないでね?」

「……わかったわ。約束よ?」

優しく微笑むお母さんの目には、涙がうっすらと浮かんでいた。

心の吹雪は止み、少年は泣くのをやめた。

しかし、その約束をして一週間もしないうちに、心はまた真っ白に染まった。
< 170 / 280 >

この作品をシェア

pagetop