マスカレード ~素顔の仮面~
後藤さんが再びハハハと笑った拍子に、タバコの臭いが私の鼻についた。
少しだけ顔をしかめてしまった私に、後藤さんは「ごめん」と謝ってくれた。
この人、意外と優しいところがあるのかもしれない。

「彩ちゃん、年いくつ?」
「・・30です」
「じゃあ新卒でウチに入社したんじゃないだよな」
「違います」

再び後藤さんの視線を感じた。けれど私は頑なに前を見ていた。

「ま、ウチみたいなところは断然中途者(モン)ばっかだけど。彩ちゃんみたいな存在は異色だな」
「私が、ですか」
「ああ」
「でも、私みたいな女性の記者さんは、他にもいらっしゃいますよね」
「いるよ。だが、彩ちゃんみたいに若くておまけに可愛くて、しっかりしてるミソラだったら、もっと洋々な前途が開けただろうに。一体何の因果でこんなアコギな商売に股、じゃねぇ足突っ込んだわけ?他にももっとイイとこ、てかイイ職あっただろーに」

後藤さんの面白い言い方に、ついクスッと笑った後、私は「復讐するためです」と答えた。

< 14 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop