カボチャの馬車は、途中下車不可!?
そうか、そういうことか……
軋むような痛みを訴える胸の内に気づかないふりをして、すばやく息を整える。
わかったわよ……私だって大人だし。もう2か月以上経つんだし。
落ち着いて、ポーカーフェイスを装って、初めましてって——……
「……っ」
思わず両手でぐしゃっと、ジャケットの端を握りしめていた。
顔を上げて彼の視線とぶつかった途端。
いろんな感情が思い出が、波のように寄せてきて、押しつぶされそうになってしまったから。
全部覚えてる。
指に通した、その金髪の感触も、
甘く重なった、その唇の温度も、
私を見つめる、大好きな翡翠の色も、……
思い知らされる。
記憶も想いも、まるで褪せてないって——
必死で衝動を抑え、見つめ返す先。
その眼差しは今、水底に沈んだ石のように感情を閉じ込めたまま。
私は何も、読み取れない。
ねえ、何か言ってよ。
何を、考えてるの?
心の中で呼びかけた時、固く結ばれていた彼の唇が動いた。
「あす——」