新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「……それで、どうして旧姓でいくんだ?」
「……っ、それは、周りの皆さんに気を遣われたくないからです」
吐息が首筋に触れて、必然的に身体に力が入ってしまった。
それでも必死に声を振り絞って、胸の内を打ち明ける。
「会社の皆さんに、私が湊の奥さんだって知れたら……私がどう振る舞っても、皆さんとは対等でいられなくなってしまいます」
湊が結婚したことは、入籍した日にLunaだけでなく、親会社であるWith Wedding、その他の関連会社に一斉に報告された。
一時は危ういと言われていたLunaを新しく生まれ変わらせたカリスマ社長が、どこの誰と結婚したのか……。
知らせを聞いた人たちは、ここぞとばかりに尋ねてきたらしいのだけれど、今のところ私の周囲で変わったことは起きてはいない。
それは私の生活を守るために、時期が来るまでは内密にするようにと身内に厳しく言い含めた湊の計らいだったのだけれど、彼がそうしてくれたことは、まだ彼との生活に慣れるのに精一杯な私にとっては、とても有り難いことだった。
『俺が、桜との新婚生活を邪魔されたくなかったからそうしたんだ』
『桜には、今までどおり、自然体でいてほしい』
そう言って私の髪を撫でてくれた湊の優しさに、私はどれだけ感謝して胸を高鳴らせたか、湊はきっと知らないだろう。
「湊の結婚に湧くLunaに……今、"如月"姓を名乗る私が現れたら、それだけで皆さんは疑いの目で私を見ると思うんです」
"如月"という苗字は、それなりに珍しい苗字だと思う。
少なくともLunaの社員であれば"如月"と聞いたら一番に自分たちのトップに立つ湊を想像するだろうし、湊と同じ苗字の新入社員の噂はあっという間に広まってしまうだろう。