新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
 


「お腹空いたな」


ぽつりと零されたその言葉は、どちらの意味なのだろう。

思わずピクリと反応してしまった私に気がついて振り返った湊が、やっぱりイタズラに笑ってみせる。


「今の、どっちの意味だと思う?」

「な……っ、そ、そんなの……っ」

「ご想像にお任せします、俺の可愛い奥さん?」

「み、湊……っ」

「いざ食べるときには、"いただきます"って手を合わせないとな。有り難みが嫌というほど、わかってるし」


今日何度目かもわからない唇が、額に触れた。

しっかりと繋がれた手は優しくて、とても大きい。

結局その日食べたカレーの味と時間は、一生忘れられないものとなった。

ふたりで並んで洗い物をして食器を片付けて……。

こんな毎日がこれからも続いていくのかと思ったら、それはとても贅沢な、幸せだと思った。

 
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