新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「ごめん、桜……」
結局、促されるようにゆっくりと身体を起こした湊の影はリビングへと消えていった。
その瞬間、何故だかとても嫌な予感がして身体がブルリと大きく震えた。
「……はい。はい……わかりました、今すぐ妻と向かいます」
そして、予感は的中する。
──深夜にかかってきた電話は、危険を知らせる内容だった。
入院中のおばあちゃんの容態が、急変した。
先に私の携帯に電話をしたけれど繋がらず、緊急連絡先として知らせてあった湊の携帯電話に病院から電話が掛かってきたのだ。
「──桜、急ごう」
それから、湊とどれくらいの時間で病院へ向かえたかは覚えていない。
気が付いたら、呼吸器をつけられたおばあちゃんの病室で朝を迎えていて……。
「……桜、大丈夫だから」
そんな私の隣には、支えるように寄り添ってくれる、湊がいた。
胸元に咲く桜のチャームを握る手に添えられた、大きな手。
けれど不安で溢れる涙は枯れることなく、朝まで私の頬を濡らし続けていた。