新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない


「では、僕たちはこのあと早速、デザイン部に足を運びます」


その言葉を合図に、私とサツマちゃんも席を立った。

そして、机の上に広がっていた企画書をまとめてファイルケースへと入れて、根岸さん、サツマちゃんに続いて会議室を出ようとしたのだけれど……。


「……花宮さんは、このあと先日の話の続きがあるから、少しだけ残ってもらってもいいかな?」


部屋を出る直前で、背後から湊に呼び止められた。

彼の言葉に一瞬目を丸くして固まった根岸さんが言葉に詰まっていたけれど、すぐに湊が内容を補足する。


「金曜日の夜に、契約の話で花宮さんを連れ出しただろう? その契約の話の続きが、まだ少しだけ残ってるんだ」


──嘘。

だってあの日、湊は私を歓迎会から連れ出したあと……そんな契約の話はないと、私に告げた。

ただ、私に早く会いたかったから連れ出した。

そう言って、呆れるくらいにキスをしたのだ。

だけど、そう思っても声にはできない。

まさか、それが真実だと今、ここで言えるはずがない。

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