新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「だから私……その……」
「もしかして……キスも、初めてだった?」
「え……? あ、はい……。さっきのが、初めてです……」
それでも彼に、嘘は吐きたくなかった。
真っ赤な顔を隠す余裕もなく答えると、何故か彼は驚いたように目を見開いて私を見る。
「それは……悔やまれるな」
「え……?」
「桜のファーストキスだって知ってたら、もっとよく味わったのに」
「……っ」
「今の話を聞いたら……余計に桜が愛しくて、堪らなくなった。桜は、どれだけ俺を夢中にさせれば気が済むんだ……」
眩しそうにそっと目を細め、嬉しそうに顔を綻ばせた彼を前に胸がトクリと甘く鳴る。
「桜の最初で最後の男になれるなんて、こんなに幸せなことはない」
経験のない女は面倒くさいだなんて……寧ろ湊は、私に経験がないことを喜んでくれているのだ。
そう思うと私の胸にも言いようのない愛しさが溢れだし、再び涙が目の端から零れた。
……私、この人に出会えて良かった。
こんなに素敵な彼に愛してもらえた自分こそ、誰よりも幸せ者だ。