悪しき令嬢の名を冠する者
 前世で好きだった植物も、手を出そうとしただけで庭師が慌てて飛んでくる。我儘故の弊害だろう。

 尤も前世の記憶を思い出すまでの私は花が嫌いだったようだし、「綺麗ね」と口にすれば、皆、目を見開いていた。

「つまらない……本当につまりませんわ。フィンと言い合いしていた方がずっとマシよ」

「だったら勉強でもなさったらどうですか」

「勉強なんて面白くないわ」

「……突然、どうなさったんです?」

「私が勉強嫌いだなんていつものことでしょう」

「ええ、ですが、ここ一週間は様子がおかしいですよ。突然、何か言い付けることが増えたかと思ったら、我儘具合は、そうでもありませんし」

「別になにもないわよ」

 心臓が早鐘を打つ。ドクン、と大きく脈打ったかと思えば、幾度となく私に焦りを伝えた。
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