悪しき令嬢の名を冠する者
「ねぇフィン?」

「はい」

「少しばかりか、とっても質が悪いのね今回の子達は」

「申し訳ありません」

「すぐ動揺して、醜い顔を露呈させる。この中に人を馬鹿にした人間が何人いるのかしら。
 あら、肩を揺らした貴方は心当たりがあるのね? ごめんなさい。私の好みじゃなかったから名前を憶えてないのよ二番さん」

 窓側から数えて二番目の少年が肩を震わせて嗚咽を漏らす。「酷い鳴き声ね」との言葉に表情を歪ませる様は気の毒に思えてならなかった。

 歪む空間にレイニー様の深い溜息が響く。重い空気を表すかのように少年達の表情は曇り、鼻を啜る音は室内を湿気で満たした。

 その中でたった一人。涼しい表情を携えているロビン。

 もう少し周りに歩調を合わせればいいのに、と胸中でぼやきながら、彼女の厳しい言葉を宥める言葉を考える。しかし、剣術くらいしか能が無い俺の脳漿は、考えを纏めることすら困難だった。
< 180 / 374 >

この作品をシェア

pagetop