悪しき令嬢の名を冠する者
「私の国はね。一夫多妻制で皆仲が良いのよ」

「知っているわ。知識としてわね」

「そうだったんですの?」

「隣国の法律、財政状況、地理、風習、他にも王家と上流貴族の顔と名前は全て頭に叩き込んであるもの」

「凄いわ……でも令嬢である貴女がどうしてそんなことを?」

「無知であることが嫌いだからよ」

 私は無知で馬鹿でどうしようもない姫だった。目の前のカタリーナ様に自分を重ね責め立てるあたり、そこから抜け出せたとは言えない。

 それでも自らが犯した過ちを認め、悔いることは出来るようになった。

 きっと民からすれば〝分かったようなことを言って〟そう糾弾されるだろう。謝ることすら赦されないかもしれない。

 けれど、もしもあの日に戻れたら、私は床に額を擦りつけて心からの謝罪をしたい。申し訳なかった、と。私が馬鹿だったから貴方達を苦しめてしまったのだ、と。救った気になって申し訳なかった、と。

 私がこれからしようとしていることは所詮エゴに過ぎない。それでも彼らが勇気を出して行った改革を今度は私の手で行おう。

 贖罪になるかは分からない。それでも私にしか出来ないことをしたい。私は国を救える立場に在るのだから。
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