悪しき令嬢の名を冠する者
「エレアノーラは、その後の話をしていない。けれど彼女の行動は考えを顕著に表していた。賭けてみるには十分。これが俺の考えだ。異論はあるか?」

「異論など、はじめからございません」

「そうか。これからが楽しみだな」

「そうですね」

「今日はもうよい。下がれ」

「承知しました。おやすみなさいませ」

 就寝の挨拶を告げ、静かに扉を閉める。隣に当てがわれた使用人用の自室に入れば真っ暗だった。

 ふと便箋を受け取ったままだったことを思い出す。あの人は仕方ないな、と机に放り出し、僕は部屋の灯りへ手を伸ばした。
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