溶けろよ、心


先生はびっくりした表情で私を見た。


「……おお〜橘か!なんだよ、久しぶりだなあ!」


「お久しぶりです。先生、何してるんですか?」


「ああ、今は、遅刻してきた生徒がいないか見てるんだよ。お前はどうした、学校は?」


「あはは…」

私は笑って誤魔化した。


「ははは、まあいいんじゃないか。たまには」


昔から、こういう人だった。
小学校5年生の時の担任の先生。


「…ていうか先生、今ってホームルームの時間じゃないんですか?」


「俺、教務主任になったんだよ。だからいいんだ」


そうだったんだ。

雲中先生の時も思ったけど、私がいないところでもちゃんと時間は流れている。当たり前のことだけど。
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