溶けろよ、心

『真由!』

向かい合った私たちの間に、沈黙が流れる。

先に息を吸ったのは晴斗だった。

『ごめん』



謝る人が違うよ。勝手に無視したのは私だった。勝手に怒ったのは私だった。

そのとき、晴斗がすごく大人に見えて、自分自身が惨めに思えた。


私が、謝らないといけないのに。

『ごめんなさい』

私が頭を下げると、頭上から晴斗の笑い声が聞こえた。

私が顔を上げると、笑顔の晴斗と目が合う。

2人同時に吹き出して、笑いが止まらなくなった。


いつぶりだろう、こんなふうに笑いあったの。


嬉しくて泣けてきた。

『泣くなよ。真由』

『泣いてないよ、笑いすぎただけ』

晴斗は、目尻から零れた涙を親指で拭ってくれた。

恥ずかしいから俯く。



京都タワーで感じた嫉妬心なんて、もうキレイさっぱり忘れ去っていた。
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