溶けろよ、心


「な〜ほ〜!誕生日おめでとう!」

菜穂は、中学1年生の私の妹。今日は、愛しい愛しい菜穂ちゃんの誕生日。

「お姉ちゃん痛いって!もう!……ありがと」

勢いよく抱きついてプレゼントを渡すと、また怒らせてしまった。

「真由は本当に菜穂が好きねえ」

お母さんとお父さんが呆れたように笑い合う。
えへへ、と私が照れ笑いする。これが、橘家の日常。

晴斗にはよく、俺と菜穂との接し方に差がありすぎだって怒られたっけ。もう懐かしく感じる。


最近の私は、日々勉強に勤しむ毎日だった。
本屋にも行かず、テレビも見ず。

つまり、晴斗を目にしなくなった。

「わ!これかわいい!筆箱欲しかったんだ〜。これ本当にお姉ちゃんが選んだの?」

「あ、当たり前でしょ〜」

本当は少しだけ、町田くんにアドバイスを貰ったんだけどね……。



町田くんに誘われて買い物に出かけたのは、つい3日前のことだ。
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