龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「占い師、サザリナ様の命により、その忌み子の娘を捕らえに来たんだ」

フードを外すと、竜騎士の同僚が答える。軽薄そうな雰囲気は相変わらずだ。

「何故、サザリナ様が?」

「そこのお嬢さんが、新しい生け贄だからだそうだ」

「!」

同僚の言葉に、竜騎士は察した。

「だが、姫様もこの娘を連れてこいと言っていた。姫様の命の方が先だ」

だから手を出すなという意味で言うと、同僚は肩をすくめる。

「だったら、さっさと捕らえりゃいいだろ?そこの槍使い達が邪魔なら、俺達が相手してやるが?」

「………」

「………して」

竜騎士と同僚が見合うと、か細い声が聞こえた。

「「?」」

竜騎士達は、声の主を見る。

「……どうして姉さんを……殺そうとしたんですか?」

「……姉さん?」

同僚が首を傾げると、レインは立ち上がる。

「七年前、貴方達と同じ姿をした方達が、私の姉を連れ去り、火炙りにしようとしました。貴方達のせいで、姉は………ティアナ姉さんは!」

怒りが込み上げてきた。ティアナのことを、死の瞬間を思い出した途端。

「貴方達は、一体誰なんですか!?」

誰も憎んではいけない。恨んではいけない。

レオンが言い聞かせてきた言葉が、頭から抜ける。

悲しくて、辛くて、憎い。

姉を奪った切っ掛けとなったフードの人間達が、憎くて仕方ない。

「姉さんを、返してよ!!」

レインは弓を取り、フードの人間達に向けて矢を引いていた。

「止めろレイン!」

「レイン!駄目なの!!」

ティアはゼイルの後ろから出て、レインの腰に抱きついた。

その瞬間、レインの心が落ち着いていく。

「………あ………ティア………?」

「大丈夫なの!ティアが側にいるの!」

「…………私…………何を………?」

今、自分は何をしようとしていたのだろう?

(……私、怒りに任せて、この人達を……?)

それに気付いた途端、レインは弓を落とした。

まさか、殺そうとしたのだろうか?この人達と同じようなことをしようとしたのだろうか?

「……話し合いで連れていくのは無理だな」

レインの様子を見ていた同僚は、腰に差していた剣を引き抜いた。
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