龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「……それは」

むしろ、城に連れていき報告すべきだろう。その後の判断は、龍王が下すべきだろう。

けれども、何故かそれはしたくなかった。

自分でも良く分からないが、レインを殺すことは出来ないと思った。

初めて、殺したくないと思ってしまった。

「………」

どうすべきかと、竜騎士が大剣を見下ろしたその時―。

「見付けたぞ!赤い髪の娘だ!」

竜騎士の後ろから、数人の足音が聞こえた。

「!」

「ティア、おいらから離れるなよ」

ティアが怯えてギュッとゼイルの手を握ると、ゼイルは険しい表情でやってきた人間を見る。

数は六人くらいだ。全員フードを被っており、顔が良く見えない。

「……!!」

レインは、フードの人間達に目を見開いた。記憶の扉が開いていく。

―レイン、今から私は禁断の魔法を使うわ―

(………姉さんを、殺そうとした人達と同じ?!)

姉を連れ去り、火炙りにしようとした人達と同じフード姿。

あの時、姉はフードの人間達を道連れに死んだ。その人達と同じ姿の人達が、何故ここにいるのだろう?

「レイン?」

レインの様子が変なことに気付き、アルが声をかける。

「………っ………」

レインはアルの声が聞こえていないかのように、体を震わせていた。

ようやく見付けた。姉の死に関わる人達だと言うのに、レインは動くことが出来なかった。

忘れていた姉の死の瞬間と、姉の最後の微笑み、言葉がよみがえる。

―約束よ、レイン。貴女は逃げて生き延びるの。そしていつか、貴女は―

姉の言葉はそこで止まった。何を言おうとしていたのか、あの頃の自分には考えてる暇など無かった。

レインはその場に崩れ落ちる。

(……どうして、姉さんは死ななければいけなかったの?)

「レイン!」

「……どうして……」

小さく呟いた言葉は、空気と共に溶けていく。

「……どう言うことだ?」

竜騎士は、自分の同僚に声をかけた。
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