龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「姫様、龍王様がお呼びです」

扉を開けて入ってきたのは、竜騎士だった。

「あら?お母様が?……私今レインとお話してるの。後でにしてちょうだい」

「……龍王様のお具合が、大分悪いようなのですが」

竜騎士にそう言われても、セレーナは興味が無いように冷めた目をしている。

「お母様の具合が良かろうと悪かろうと、私は興味ないわ。お母様は、今まで私のことを愛してくれなかったんだもの。だから、私もお母様なんて嫌いよ」

鼻を鳴らして、セレーナはそっぽを向く。

「……姫様。龍王様が亡くなられた後、貴女はこの国の龍王様となられます。ですから、情けをかけて差し上げるのもよろしいのでは?」

「………それもそうね」

竜騎士の言葉に、セレーナはしぶしぶ頷くと、扉へと歩み寄る。

そして、一度レインを振り返った。

「じゃあまた後で遊びましょうね!レイン!」

そう言って手を振ってから、セレーナは部屋を出ていった。

ご丁寧にガチャリという鍵の音がしたので、鍵をかけていったのだろうが。

「……ふぅ」

小さく息を吐くと、ベットへと体を預ける。

ぽんっと体を受け止め、優しく押し返す弾力のあるベットからは、ギシギシと軋んだ音がした。

だが、すぐに鍵の開く音が響き、レインは体を起こす。

セレーナがもう戻ってきたのだろうか?

しかし、中に入ってきたのは、茶色の髪の老女だった。

「良く来たな娘。歓迎するぞ」

「……貴女は………誰ですか?」

目の前まで歩いてきた老女は、にやっと笑みを浮かべ、レインの顎に指をかけ上を向かせる。

ぶつかり合う視線に、知らずレインは唾を飲み込んだ。

「我が名はサザリナ。この国の占い師だ。……喜べ娘。お前は神龍様の一部となるために選ばれたのだ」
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