龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「どこへ行くつもりで?」

「………そこを、どいてください」

レインはサザリナへと詰め寄る。

「神龍様を、予言通りに殺すつもりか!!させぬ、それだけはさせぬ!たかが小娘が、神を殺すなど―」

「無礼者!」

レインの両肩を掴んだサザリナに、レインは凛とした声で言い放つ。

「……下がりなさい。これは、命令です」

レインの声に、回りにいた誰もが黙り混んだ。

「………あ……ああ」

サザリナも、レインの肩から手を離し、後ろへとよろける。

(馬鹿な………わたくしが、怯えただと?)

サザリナが言葉を発することが出来ずにいると、レインは一歩踏み出す。

サザリナはハッとして、隠し持っていた護身用のナイフを取り出すと、それをレインへと振りかざす。

「させぬ!わたくしはこの国を―」

「止めてぇぇぇぇ!!」

セレーナが前に飛び出し、レインの背中を抱き締めた。

そして―。

「!っ……………ぁ………」

「セレーナ!」

レインはセレーナを振り返る。セレーナの背中にはナイフが刺さっていた。

「セレーナ!セレーナ!!」

「わ、わたくしは……」

震える手を見下ろし、セレーナを見て、サザリナは青ざめた。

「貴様!」

竜騎士はサザリナの首筋へと大剣を突き付ける。

「よくも、姫様を!!」

「わたくし……は……」

サザリナは呆然と呟き、その場にくずれおちる。

「セレーナ!しっかりして!」

「……大……丈夫よ……エレ……イン」

セレーナは顔を上げて微笑む。レインを安心させるように。

「師匠、お願いします。セレーナを……助けてください」

「お前なら出来るだろ。……僕からもお願いします」

記憶はないとはいえ、アルにとっても、セレーナは妹だ。

「……構わないよ。そこをどいて」

レオンがセレーナの背中に手をかざす。

だがその時―。

「「!」」

地面が大きく揺れた。

何かが割れるような音と共に、地面が更に大きく揺れる。

「……どうやら、神龍の結界が解けたようだね」

「!結界が?!」

ならば、神龍はもう自我を失っている可能性が高い。

「レイン、急いで。セレーナは責任持って治す。だから彼女を………救ってやってくれ」

「俺も、セレーナ様の側に」

竜騎士はセレーナに寄り添うと、申し訳なさそうにレインを見る。

だが、レインは笑った。

「姉様を、守ってね!」

「………はい」

竜騎士が頷くと、アルがレインの側へ寄る。

「僕も行く」

「………側に、いてくれるの?」

レインにアルは頷くと、そのままレインの手を握る。

「……行くぞ!」

「うん!」

二人は神龍の、元へと走り出した。

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