龍使いの歌姫 ~神龍の章~
別れの一矢
城の中庭へ出ると、神龍が空の上で火を吹いていた。

ぐるぐると体をうねらせ、まるで痛みに喘いでいるようだ。

城の兵士達の姿が見えないことから、皆逃げてしまったのだろう。

「……神龍様……」

「あそこまで、どう行けば―」

『あーにーきー!!』

アルの言葉を阻むように、聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、目の前に銀色の龍が現れ、アルに突進してきた。

「!ゼイル?!」

「ティアもいるのー!」

人の姿になったティアが、ゼイルの背中から手を振っている。

「ティア!?」

レインもアル同様、 驚きに声を上げた。

『わぁぁぁぁん!!二人とも無事で良かったぁぁぁぁぁ!!』

「………」

ゼイルがアルの近くまで来ると、アルは飛び上がって頭の上に乗り、また角を引っ張った。

「煩い」

『いぎゃぁぁぁぁっ!!』

ズシャーと音をたて、ゼイルは地面へと突っ込んだ。

「だ、大丈夫?」

『………おぅ。花畑が見えたぜ……』

「それ知ってるの!あの世なの!」

どうやらあの世に片足突っ込みかけたらしい。

『いててっ』

ゼイルは鼻を押さえると、レインを見下ろす。

『爺さんがさ、時が来るまで待機してろとか言うから、迎えに来るのが遅くなった。……で、上で暴れてるあいつが神龍か?』

「………うん」

レインは手短に、自分がしようとしてることを告げた。

『……そうか。……じゃあ、おいらが神龍の所まで飛んでやるよ!乗りな!』

「………ありがとう」

レインは頭を下げると、ゼイルの背へと乗る。

アルに支えられながら背中へ乗ると、ティアが飛び付いてきた。

「レイン!無事で良かったの!」

「……ティア」

レインはティアを抱き締め返した。この温もりに、レインは助けられてきたのだ。

『んじゃ、行くぞ!』

「お願い、ゼイル!」

すべてを終わらせるために、レイン達は神龍の元へ向かう。
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