龍使いの歌姫 ~神龍の章~
レインとは明らかに違う声に驚くと、槍を背負ったアルがやってきた。

「アル。見回りは?」

「ゼイルがいないとどうしようもないからな。探してた」

『兄貴ー!!』

ゼイルはアルへと飛びかかる。だが、アルはそれを避け、頭の上に乗ると、角をガシッと掴んだ。

「……落ち着け」

そして、角をグッと後ろへ引っ張る。

『いだだだだっ!!ちょっ!おいらのチャームポイントがぁぁぁぁぁ!?』

「ちゃーむぽいんと?って何?」

首を傾げるレインに、アルは、答えない。

「まったく。………で、何があったんだ?」

『兄貴。最近ティアが可愛いくてどうしよう?!』

「何時ものことだろ」

アルも、ゼイルがティアを可愛がってるのは知っているので、そう答えた。

『……兄貴と姉貴って、思考が同じだな。………そうじゃなくって!ティアが大人になってからもう一年経ってんじゃん?何か最近可愛さが増したんだよ!つまり、何かドキドキすんだよ!』

「…………」

ゼイルの必死な訴えに、どことなく納得した顔でアルは、ゼイルを見下ろす。

「この時期は丁度、龍の繁殖期だからな。むしろ、お前は遅すぎなくらいだ」

『やっぱり?他の龍には興味無かったからな~』

「……?はんしょくき?」

それは何だと首を傾げたレインを、アルは凝視する。

「……まさか、繁殖期が何なのか知らないとでも言う気か?」

「うん」

レインはこくっと頷く。

「………お前、幾つだ?」

「さっきも言ったけど、明後日で十九才だよ?」

「お前の師匠は何を教えていたんだ?」

どこか呆れたようなアルに、レインは「うーん」と言いながら考える。

「この国の歴史とか、弓の使い方とか、薬草の煎じ方とか」

『……姉貴、人間の子供がどうやって生まれるか知ってるか?』

ゼイルの質問に、レインは唸る。

「それを知りたかったんだけど、師匠が『レインにはまだ早いから』って言って教えてもらえなかった。でも、何となくは分かるよ!」

自信満々に胸を張ったレインに、アルとゼイルは絶対間違った知識を持ってると思った。

念のため、無言で先を促す。
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