龍使いの歌姫 ~神龍の章~
ゼイルの恋煩い?
『………はぁ』

アルとティアと別れ、レインは長老の所へと向かう。

すると、前方から何やら落ち込んだ様子で浮遊している、弟(または息子)がやってきた。

「ゼイル?何かあったの?」

『あ、姉貴!』

アルの恩人であるため、割りと最初の方から「姉貴」と呼んでいたが、レインはどうも姉貴呼びは慣れない。

だが、定着してるのを無理矢理直すのもやりにくいだろうと思い、そのままにしている。

『わーん!おいら姉貴に顔向けできねー!!』

何故か突然泣き出し、地面へと顔を埋めるゼイルに、レインも慌てる。

ゼイルは真っ直ぐな性格で優しいが、ちょっと思い込みが激しいところがある。

「ど、どうしたの?アルと喧嘩した?」

鼻を撫でながら、ゼイルを宥めると、ゼイルは鼻を啜ってレインを見る。

『姉貴はティアの母ちゃんだろ?』

確かに母親代わりでもあるし、姉代わりでもあるが、それとゼイルが泣くのと、何の関係があるのかと、レインは首を傾げる。

『………最近、ティアが凄く可愛いんだ!』

「?ティアは元から可愛いよ?」

『そうだけど!そうじゃなくって………こう、何だ?ドキドキするっていうか。うん、何か落ち着かない』

レインにとっては、ティアが可愛いのは何時ものことで、ゼイルがティアを可愛いと言うのも何時もの事だ。

だが、ドキドキすると言うのは、一体何なのだろう?

「心臓が落ち着かないってこと?」

『そ、そうなるかも……まぁ、原因は何となく分かってるんだけど……だから、余計に姉貴に顔向け出来なくて。………うわーん!ごめんよ姉貴ー!』

ゼイルはまた顔を埋めて泣いてしまった。

その様子に、どうすればいいのかと、レインは困り果てる。

(心臓が落ち着かない……何かの病気かな)

もしそうならば、長老に診てもらえないかと思ったが、そう言えばゼイルは長老の所に行っていたことを思い出す。

「ゼイルは長老様に呼ばれたんだよね?その時に、その症状はお話しなかったの?」

『……話したよ。話したけど、あのじーさん「ティアはやらん」としか言わなかったんだぞ!それらしいアドバイスくれよ!!』

ゼイルは頭を抱えた。長老の言葉から、何となくは察したのだが。

『兄貴~。不甲斐ない弟でごめん!』

「やかましい」

『え?』
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