オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「無理ですね。そういう嫌がらせは、徹底して松浦さんの目の届かない場所で行われるものですから」
「女の子の嫉妬は怖いからね」
やれやれといった具合の笑みで言う松浦さんに、ため息を落とす。
「マフラー、ありがとうございます。駅まで行ったら返します」
チャコールグレイ単色のマフラーは、すぐに体温に馴染みぬくぬくとして温かい。
触り心地から、すぐにカシミアだというのがわかった。小物にまで気を使うなんて、ぬかりがない。
うちの会社は香水が禁止されているから、松浦さんもつけていない。
それでも、マフラーからはうっすらと松浦さんの香りがしていた。おそらく、シャンプーだとか洗剤だとか、そういうのが混ざった香りなんだろう。
絶対に口にはしないけれど。
下手な香水なんかより、よっぽど落ち着く香りだ。
駅に向かい歩き出しながら、マフラーに顎をうめる。
「さっきの話ですけど。加賀谷さんと私の関係は、いい意味でも悪い意味でも、これから先どうにもならないと思います」
すれ違う、OLらしき女性がチラッと松浦さんを見たのがわかった。
やっぱり、思わず目を奪われるほどの美形なんだなぁと再確認していると、女性の視線なんて気にもしない様子で松浦さんがじっと見てくるから、眉を寄せた。
「……なんですか?」
「友里ちゃんってさ、加賀谷さんのこと話すとき、いつも泣きそうな顔して笑ってるって自分で気付いてた?」
自分がそのときどんな顔をしているのかなんて、いちいち考えたことがないだけに、そんなことを言われたところで分からない。
でも、松浦さんが言うんだからそうなんだろう。