オオカミ御曹司、渇愛至上主義につき
「松浦さんのせいなんですからね。先週のことだって……本当だったら私、加賀谷さんの言葉にうなずいてたのに、松浦さんが『行くなよ』なんて言うから、だから私――」
言い切る前に唇を重ねると、友里ちゃんは目を見開く。視界がぼやけるほどの至近距離からその様子を見て……名残惜しく思いながらもわずかに距離を取る。
「それ、俺のことが好きだって聞こえる」
未だ驚いたままの友里ちゃんに言う。頬を手のひらで包むようにすると、身体をびくっと震えさせた彼女は、ようやく我に返ったのか顔を真っ赤にする。
けれどなにも言い返さない。
もう少し気を遣って欲しい、とこちらが思うくらいにハッキリと否定する普段の彼女を知っているだけに、うぬぼれずにはいられなかった。
この無言が嬉しくて堪らない。
「黙ってると、俺のいいようにとるけど。いいの?」
思いのほか、甘ったるい声が出て自分自身で驚く。
こんな声が出せたのか……と内心驚いている俺の視線の先で、友里ちゃんは不機嫌そうに眉を寄せていた。
けれど、否定の言葉はいくら待っても聞こえてこないし、俺をじっと見上げる瞳に拒絶の色は浮かんでいない。
本当に俺のいいようにとっていいのか。
期待して暴走しそうになる本能を止め、自問自答を繰り返していたとき。
「松浦さんがそう思うなら、そうなんじゃないですか」
キッと純粋な眼差しが俺を射貫く。
「好きにしてください」
その言葉が、彼女なりの、精一杯なんだと気づいたらもうダメだった。
いつだってセーブできていた本能が、友里ちゃんを前に暴走する。