不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「エルマも忙しいのでしょう? 散歩くらい一人でできるわよ。あちらこちらをかなり歩いたし、城内の見取り図もあるから、もう迷わないって」

「ご一緒します。それに、デイジー様から、わたしは手伝わなくてもよろしいと言われましたので……」

 最後の方は小声になっていた。まゆこは急いでエルマに言う。

「そう。よかった、ホントはね、一人で庭の散歩なんて寂しいと思っていたのよ。来てくれるなら嬉しいわ」

「はい。わたしもご一緒できるのが嬉しいです」

 細かな装飾品や繊細なドレスをエルマが扱うのは難しい、というデイジーの判断が垣間見える。

 このごろはずいぶん〈侍女〉も板についてきたと思うが、デイジーから見ればまだまだなのだろう。
< 145 / 360 >

この作品をシェア

pagetop