不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 まゆこは踵を返した。邪魔をしてはならない――その通りだ。

 早足で歩いてゆく。エルマは定位置でついてくる。部屋へ戻れば声の遮断魔法が敷いてあるから、そこでの会話は漏れない。けれどそこまで待てなかった。

 丘状になった庭の端から小道に入るところで止まり、エルマへと顔を向ける。

 早い口調で訊いた。

「ジリアンは大丈夫よね? 闘技では命まで奪うのは禁止だって聞いたわ。怪我はするかもしれないけど、無事に終わるわよね」

 エルマは素早く周囲を見て、誰もいないのを確かめてからまゆこに答える。

「それは、負けを認めた場合です。勝敗が決すれば、そこで手打ちとなり、攻撃は終了します」

「負けを認める……? そんなこと。ジリアンが負けを? あり得ない……」

 呟くように言った。出逢ったのは二週間余り前で、たったそれだけしか彼を知らない。あり得ないなどと、どうして断言できるのか。

 自問自答するも、出てくる答えは変わらなかった。

 エルマも反論しない。静かに頷くだけだ。
< 154 / 360 >

この作品をシェア

pagetop