不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
『手助けをしてくれる者を呼んだつもりだった』

 三割しか発揮できない原因――バーンベルグ家に掛けられた呪いを成就させてくれる者を彼は呼んだのだった。けれどそれはまゆこではない。

 まゆこの両手が戦慄く。叫び出してしまいそうだ。

「……マユコ様。もうすぐ晩餐のためのお着替えの時間です。戻りませんと」

「バンサン?」

 頭が付いていかない。

「マユコ様!」

 大きな声で我に返る。彼女を凝視するエルマがゆっくりお辞儀をした。

 まゆこは下げられた頭を見つめる。黒い頭髪で覆われた頭は本当に低くなっていて、エルマがどんな顔をしているか少しも窺えない。

「どうぞ、いつも通りに。どうぞ、お願いいたします」

 よく通る声は聞き慣れたものだったが、エルマの両肩が震えている。
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