不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 半年前、大学を卒業して巨大研究所に就職した。

 いまはまだ、その中のラボの一つの室長補佐のさらに下になる助手に過ぎないが、研究員には違いない。

 それなのに、上司である補佐に強く言われると、なにも返せなくなってしまう。

「えぇと、この場合、仮定の年月をもっと長く設定した方がいいと思うのよ。それを稟議書で上げれば、補佐に細かな説明を聞いてもらえるはずなんだけど……」

 対処としてはそれくらいしか思い浮かばない。
 ただ、本当にそれでいいのかどうかは分からないのだった。

「……問題の本質は、わたしが樹木優先の思考になってしまうところね。補佐はそれを言いたかったのかもしれないな……」
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