不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 雪などものともせずに、ジリアンが走ってくる。ペールブロンドが靡いていた。黒い上着には裂かれた痕がたくさんあった。血も滴っている。

 しかし彼は使命を果たした。これで文句のつけようのないゲルツ王になる。

 初めて好きになった人が守ると言ってくれた。それだけでいい。

 ――……ウィズへ来られて、良かった。

「ジリアン……」

 ぎゅうと握ったヒイラギに願う。

「《運ぶのは同じもの、わたし。同じ状況になったのなら、条件はそろう。お願い。わたしを元の世界へ帰して》」

「マユコ様っ」

 エルマとルースの声に被さるようにして響くジリアンの声。

 大好きな声が聞こえる。

「マユコ――……っ」

 魔法陣もなく魔法が実行されていった。

 手の中のヒイラギの葉が砕け、砂になってゆくのと同時に、エルマに抱き起されていたまゆこの姿が消えていった。
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