不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 逡巡するために掛けた時間などあっただろうか。

 まゆこは、近くに落ちていたトートバッグを拾ってきて、携帯を取り出すと、そこに家族への伝言メールを打つ。

 生涯でもっとも早く指が動いたかもしれない。

『お父さん、お母さん、わたしは遠くへ行きます。嫁に出したと思って諦めてください。育ててくださって、ありがとうございました』

 送信を押す。

 これで、誰も知らないうちにいなくなった行方不明者にはならないはずだ。

 時間はかかると思うが、娘は自ら望んで旅立ったのだと、いつか納得して受け入れてほしい。

 弟に両親を頼むと入れて送信。
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