不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 まゆこは左手を上げて指輪を見る。指輪は粉々になって指から離れてゆくところだった。これが追跡目標になってくれたのだ。

「必ず守ると言っただろう?」

 約束は守られた。

 トラックは通り過ぎ、ジリアンのおかげで彼女は助かっている。

「ジリアン……、あなた、透き通ってきたわ」

「時間切れだ。どうやら私はこの世界に歓迎されていないな。ウィズへ戻される」

 世界が拒否すれば、受け入れてもらえない。

 もしもまゆこがウィズ世界に受け入れられなかったら、すぐに元へ戻され、交通事故で命を終えていた。

「もう二度と来ることはできないだろう。追跡のための魔法具はなくなったから、一度離脱したら、この世界を特定できなくなる」

 指輪はもうない。今すぐに作れるものではないし、この世界に魔法の力はほとんどないから。

「ジリアンっ」

 泣きそうになっているまゆこの顔を見て、ジリアンは言う。

「もしも一緒に来てくれるなら、この手を取ってくれ」

 差し出された手を凝視する。そこも傷だらけだった。

 あの巨大な門の鍵となった手だ。

 ――手を取れ……。自分で選べ――と。
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