不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ジリアンは領地の見廻りに出かけている。

 彼女も行きたかったが、『おまえにちょっかいを出す輩が隠れているかもしれない。新体制が整うまではだめだ』と却下された。

 彼自身がより強力に敷き直した結界があるので、城の中の方が安全だと言われる。

まゆこは庭を散歩してから自分の寝室へ戻り、以前、落ちてしまったあの窓から外を眺めながら香り立つお茶を嗜んだ。

 静かなひとときが心を休める。王城の喧騒は彼女にかなりの負担をかけていた。

 細かく世話を焼いてくれるエルマは、侍女の仕事もかなり上達していた。

「デイジーはエルマをいつか侍女頭に抜擢するつもりじゃないかしら」

「それはないでしょう。侍女頭になれば、バーンベルグ城から動けません。わたしはあくまでもマユコ様の護衛です。目指すなら、王妃殿下の筆頭侍女でしょうか」

「傍にいてくれるのはありがたいわ。でもね。エルマは他にも役目があるでしょう? ほら、ザカール族のために結婚とか。わたしのところに縛り付けていては、いけないんじゃないかって思うのよ」
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